唾液腺
唾液腺
唾液を作る組織には大唾液腺(耳下腺:耳たぶの前、顎下腺:あごの下、舌下腺:舌の下)と小唾液腺(口唇、頬粘膜、うわあご)が存在します。 唾液腺疾患は主に大唾液腺の疾患が多く、代表的な疾患を紹介いたします。
唾石症
顎下腺に好発しますが、まれに耳下腺に認めることもあります。腺内、唾液が流れる管(導管)、唾液が出る開口部のいずれかの部位に石ができ、石により唾液の流れが悪くなるもしくは詰まると、食事のたびに腫れたり痛みが出現します。感染を伴う場合には抗生剤で治療を行います。小さな石の場合は自然に石が排出されることもありますが、排出されず症状を繰り返す場合は手術にて石を摘出します。手術は石の存在する場所により、口の中から摘出する場合、頸部の皮膚を切開し顎下腺ごと摘出する場合があります。
唾液腺炎
様々な原因で生じますが、その原因によって細菌性、ウイルス性、自己免疫性などに分類されます。
化膿性(細菌性)唾液腺炎…口の中の細菌が唾液腺の導管の開口部から侵入して生じます。虫歯が原因となることもあります。唾液腺に痛みや腫れを生じ、開口部から膿の流出を認めることもあります。治療は口腔内を清潔に保つとともに、抗生剤を使用します。
流行性耳下腺炎…ウイルス性唾液腺炎の代表的な疾患で、いわゆる「おたふくかぜ」のことです。ムンプスウイルスの感染によって生じ、一度かかると免疫ができ再感染はしません。小児に好発し、発熱、片側もしくは両側の耳下腺腫脹が生じ、痛みを伴います。腫脹は3~4日でピークに達し、1~2週間で改善します。まれに聴力障害や脳炎を併発したり、大人では睾丸炎、卵巣炎などを併発して不妊の原因となることもあります。治療は安静、鎮痛剤を使用するなど対症療法となります。
シェーグレン症候群…唾液腺に生じる代表的な自己免疫性疾患です。口腔乾燥とドライアイが主な症状です。原因は不明で、診断は血液検査、唾液や涙の分泌量を調べる検査、組織検査などを組み合わせて行います。全身性エリテマトーデスや慢性関節リウマチなどの自己免疫疾患を合併する場合もあります。唾液腺に炎症が起き唾液腺が委縮するため唾液の分泌が低下し、虫歯が多発したり、味覚障害が生じることがあります。治療としては唾液を分泌させる薬を使用しますが、根本的治療はありません。
唾液腺腫瘍
唾液腺に生じる腫瘍は耳下腺が最も多く、それに次いで顎下腺、小唾液腺に生じ、舌下腺に生じることは稀です。一般的には良性腫瘍が多いですが、悪性腫瘍が生じることもあります。
良性腫瘍
症状は腫瘍ができた部位の腫脹で、痛みや神経麻痺などの症状が出ることはほとんどありません。多形腺腫、ワルチン腫瘍などが頻度の多い腫瘍です。大きくなる場合は手術
で摘出することもあります。
悪性腫瘍
いわゆる「癌」で、その種類は悪性度の低いものから高いものまで多く存在します。進行とともに痛みや神経麻痺を生じるのが特徴です。神経麻痺は特に耳下腺では顔面神経麻痺(まぶたや口を動かす神経)が生じます。治療は原則手術で完全に切除することが必須で、放射線療法や化学療法を併用することもあります。