歯科と耳鼻科の連携医療について

「歯科」という診療科は、虫歯を削って詰めている、歯周病の治療をしているあるいは、歯並びの矯正治療をしているというくらいしか思い浮かばないかと思います。

しかし、歯と歯肉などの「口腔」という器官を扱ういわゆる「歯科医療」は、体の一部を診る医療であり、他の器官を扱う他の診療科と同じであると考えております。
歯科の診療行為はほとんどが「外科処置」であり、様々な診療科との連携が必要であることは言うまでもありません。
特に、基礎疾患のある患者様は歯の麻酔一本をするにしても、あらゆる診療科との連携がなくては安全な診療はできません。

「歯科」で扱う「口腔」と、診療範囲が一部かぶる「耳鼻咽喉科」とは連携が特に必要です。
特にインプラント治療では、上顎の臼歯部のインプラント治療時に「副鼻腔」の一つである「上顎洞(じょうがくどう)」と非常に近いため、耳鼻咽喉科との連携は必須となります。

歯科と耳鼻科の連携医療について

また、歯の根っこの治療、すなわち根尖病巣(こんせんびょうそう)や、歯周病が上顎洞炎に波及して歯が原因の歯性上顎洞炎(蓄膿症)を引き起こすこともあります。

人の顔を正面から見た時、真ん中にある鼻は「外鼻(がいび)」、鼻の空洞を「鼻腔」といいます。
この「鼻腔」は「鼻中隔(びちゅうかく)」という隔壁によって、左右に分けられています。
顔の奥の方は、鼻腔とつながる「副鼻腔(ふくびくう)」という「空洞」があります。
この副鼻腔は「篩骨洞(しこつどう)」を中心として、「上顎洞(じょうがくどう)」「前頭洞(ぜんとうどう)」、「蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)」と計4つあります。
また、「鼻中隔」で左右に分けられているため「副鼻腔」は合計で8つになります。
さらに、「篩骨洞」という空洞は蜂の巣のような小さな空洞がたくさん発育しており「篩骨迷路(しこつめいろ)」とも呼ばれております。

「鼻腔」の大きな役割は、「呼吸すること」と「匂いを嗅ぐ」ことです。
「鼻腔」は、奥の方で「喉(のど)」とつながっています。
鼻で吸った空気は「鼻腔」を通って「喉」に行き、さらに気管支肺へと空気を送り込み、それと同時に肺からの空気(呼気)をそれと反対のルートで吐き出します。
「鼻腔」と「副鼻腔」の役割には、さらに「加湿・加温・ろ過機能」があります。

つまり、鼻から吸った空気は「鼻腔」と「副鼻腔」でゴミや花粉、細菌やウイルスなどを捕えるフィルター機能、乾いた空気を加湿する加湿器の機能、冬の冷たい空気を温める加温機能があります。
「鼻腔」と「副鼻腔」の表面は粘膜で覆われ、粘膜の表面の細胞は腺毛細胞(せんもうさいぼう)といい、その細胞表面には腺毛(せんもう)という細かい毛が生えています。
また、粘膜の細胞は粘液(鼻水)を絶えず産生しています。

鼻から入った異物(ゴミ、花粉、細菌、ウイルスなど)は、この粘液と腺毛によって捕らえられて、喉に運ばれ食道、胃に運ばれるか、痰となって口の中から排出されます。
この排出されるルート(異物の排出される出口)が何らかの原因でふさがってしまうと「副鼻腔炎」を生じてしまいます。
この排出ルートは、その方の鼻の構造(解剖学的構造)によってそれぞれ違います。

つまり、鼻中隔湾曲症(びちゅうかくわんきょくしょう:鼻の中央の骨が曲がっている)や、篩骨洞の異常発育などによって排出ルートが異常に狭い方、閉鎖している方はちょっとしたきっかけ(風邪、花粉症など)によって副鼻腔炎になります。
一般的にはお薬で様子を見ますが、治らない場合は内視鏡でその排出ルートを広げる手術をしなければなりません。
排出ルートを広げることで、膿などが自然に排出され、キレイになっていきます。