プチインタビュー
國弘幸伸先生 プチインタビュー
耳鼻科医が、歯の補綴(ほてつ:歯にかぶせ物や入れ歯等を入れること)、をキチッとやるのは無理じゃないですか。
それと同じように、歯科の先生も鼻のことに手を出しても、大した事ができない訳ですよ。
なので、協力するしかないんですね。
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インプラントのトラブルについて、教えて下さい。
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インプラントのトラブルには、歯科で抗生物質を何ヶ月あるいは何年も投与しているだけという症例もあります。
何も「治療」をしないのです。
あるいは口腔外科に依頼して、上顎洞根治術(じょうがくどうこんちじゅつ)をやるとか。
小澤先生は、インプラントを多数手術していく中で「上顎のトラブルは耳鼻科と協力してやったほうがいい」という考え方を持つようになったんですね。
「耳鼻科医が、どういう考え方をしているか?」
「どういう手術をやっているか?」
を小澤先生が見て、「歯科と医科の本格的な連携ができるような手術室を作ろう」ということをずっと考えていました。
さらに、こういったことを事業が成り立つのか?ということを確認するため、1年間くらい経営の大学院に通ったそうです。(大学院大学)ご主人が耳鼻科で奥さんが歯科というようなクリニックは結構ありますが、実際に耳鼻科と歯科とが「密接に連携してやっていこう!」という理念で作ったクリニックはあまりないということで、小澤先生は「日本で最初だ!」と言っています。
新しい試みと思っています。
それを実現するために、手術室の設備を整えて充実させました。
全身麻酔にも対応できるようなシステムです。入院設備はないのですが、近くに入院できる外科の病院があって、いざとなれば入院できるようになっています。
日帰りでできる手術には、広範囲に対応したいなと思っています。
インプラントがらみ、インプラント前のリスクの高い患者さんなどがメインです。
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インプラントの前にできる手術があるのですか?
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たとえば、インプラントをやる前に、上顎洞(じょうがくどう:頬の下の鼻とつながっている空洞)に膿(うみ)が溜まっていると手術できません。
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蓄膿症みたいな感じですか?
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はい。
または、インプラントを入れる前から、上顎洞炎があるのに無理にやってひどくなったという症例があるんですね。
だから、インプラントをやる前には必ずCTスキャンを撮ります。
CTは解像度がぜんぜん違うので、よくわかります。
上顎洞炎の疑いがある場合は、三次元的にチェックできるCT撮影が必須です。
レントゲンではうっすらとしかわかりません。
上顎洞が手術のできる環境があるかどうか?を調べるのです。
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インプラントの下処置、つまりインプラントができる状態に整えてあげるってことですね?
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そうです。
インプラントをやってもトラブルにならない様な環境を整える。
あるいは、上顎洞炎になっても、鼻の中の形が悪いと化膿しやすいので、それを治す。
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鼻の形が関係あるんですか?
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鼻中隔湾曲症(びちゅうかくわんきょくしょう:鼻が曲がっていて鼻で呼吸にするのに支障をきたしている状態)だと鼻が狭いので、リスクが高くなるのです。
インプラントをやると、むくむのです。
上顎洞炎がなくても、鼻腔と副鼻腔の形が悪くてサイナス(副鼻腔)リフトをやると粘膜がむくみます。ですので、術前に上顎洞炎がある人だけでなくて、サイナスリフトをやったことで上顎洞炎を起こすリスクが高い患者さんは、鼻腔の形を治して膿が溜まらないようにしてからインプラントをする。
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・・そんな医院さん、日本にないですよね。日本初ですね。
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そういった「インプラント前の治療」と「インプラントで起きた合併症」特に上顎洞の治療をやるために耳鼻科が関与したほうがいいということです。
大学病院に、歯科の先生が紹介してくれても、実際に受診できるまでに3ヶ月かかる訳ですよ。
行ったって、すぐ手術できるわけではありません。
ものすごく遅れて、治療が後手後手に回るわけです。
ココだと、「その日」に「その場」で手術ができるのです。
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手術自体には、どれくらい時間がかかるのですか?
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手術の内容によります。
30分くらいで終わることもありますけど、もっとかかる場合もあります。
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ココで手術のできる設備は整っている?
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2016年11月だけでも4件やりました。
電子スコープもあるし、手術用の内視鏡もあるし。
待っている患者さんもいます。
インプラントがらみの症例を、術前・術後、消毒などの術後処理も含めてここだと密接に協力して出来ます。
耳鼻科での処置の後、小澤先生に来てもらって「こちらの患者さん、ココどうですか?」
内視鏡で診たりCT撮ったりが、その日その場で出来るじゃないですか。
その場でディスカッションできるじゃないですか。
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いやあ、患者としてはこれほど心強いことはありませんね。
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非常に密接な連携ができるような施設を作りたいということで、今回小澤先生が大枚をはたいて作りました。(笑)
僕は、ここは将来ものすごく発展するんじゃないかと思っています。
ある大学の医局長さんが来たとき、設備がいいので「できればココに来たい」と言っていました。結構ね、知られたら患者さん、いっぱい来るんじゃないかと思います。
耳鼻科医は足りないんですよ。
外科系の医者はどんどん減っています。
手術は若いときに習得しないと、身につかない技術です、「職人」なんです。
耳鼻科医が、歯の補綴(ほてつ:歯にかぶせ物や入れ歯等を入れること)、をキチッとやるのは無理じゃないですか。
それと同じように、歯科の先生も鼻のことに手を出しても、大した事ができない訳ですよ。
なので、協力するしかないんですね。
インプラントに関しては、繊細な治療なので協力しないとダメなんですよ。
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多くの設備が入っているそうですが。
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僕が欲しい設備は、ほぼ全部ある。
外来の耳鼻科で、これだけの設備があるところはあまりないんじゃないんですか?
まずね、CTスキャンがあるんですよ。
手術室があるのは貴重ですね、道具も全部揃えました。
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耳鼻科って、CTスキャンってあまりないんですか?歯科には結構あるのですが。
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CTがあるというのは、とても大きいです。
単純写真(レントゲン)で診断のつく病気はないですよ。
それくらいCTって、強力な武器なんですね。
保険では、まず単純写真(レントゲン)を撮って、異常があったらCT撮って・・と言いますが、単純写真は何の意味もない、単に医療費がかさむだけ、被爆量が増えるだけです。
僕に言わせると、単純写真(レントゲン)で得られる情報は、無いです。
画像が必要な患者さんに対しては、いきなりCTじゃないと意味がないです。
単純写真は、単に患者さんに不利益を与えるだけです。
もう一回、日を変えてCTを撮りに来なきゃいけないでしょう?
患者さん治療が、その分だけ遅れるじゃないですか?
被爆量は増える、診断は遅れる、治療は遅れる、何にもメリットない。
そういうルールは改めるべきだと思います。
そういう意味で、CTスキャンがあるのは非常に大きなメリットだと思います。
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患者サイドからすると、検査も治療も1ヵ所で済むので楽ですね。
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「あっち行ってください」「こっち行ってください」って言われなくて済む。
歯科から耳鼻科に来る患者さんもいるし、逆もある。
1箇所で用が済むのは、患者さんも我々もメリットが多くありますね。
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