睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群とは、SAS(Sleep Apnea Syndrome)とも呼ばれ、眠っている間に呼吸が止まる病気です。

医学的には、「10秒以上気道の空気の流れが止まった状態」を無呼吸とし、無呼吸が一晩に30回以上、もしくは1時間あたり5回以上あれば、睡眠時無呼吸となります。

睡眠1時間あたりの「無呼吸」と「低呼吸」の合計回数をAHI(Apnea Hypopnea Index)=無呼吸低呼吸指数と呼び、この指数によって重症度を分類します。なお、低呼吸とは、換気の明らかな低下に加え、動脈血酸素飽和度(SpO2)が3~4%以上低下した状態、もしくは覚醒を伴う状態を指します。

・軽症 5≦AHI<15
・中等症 15≦AHI<30
・重症 30≦AHI

成人男性の約3~7%、女性の約2~5%にみられます。男性では40歳~50歳代が半数以上を占める一方で、女性では閉経後に増加します。

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中の無呼吸の原因によって「閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)」と「中枢性睡眠時無呼吸(CSA)」に分類されます。9割が「閉塞性睡眠時無呼吸」で、中には両者の「混合型」も存在します。

それぞれの詳しい原因は以下の通りです

・閉塞性睡眠時無呼吸

睡眠中に空気の通り道である上気道が狭くなったり、一時的に閉塞したりすることによって発症します。

上気道が狭くなる主な原因は、肥満による首や喉周りの脂肪です。首周りの脂肪は仰向けの状態で横になると重力にしたがって気道を圧迫するため、上気道のスペースが狭くなります。そのほかにも生まれつき舌や扁桃、アデノイドが大きかったり顎自体が小さかったりすることで、横になると舌根沈下が生じやすくなることも大きな原因となります。

成人の睡眠時無呼吸症候群は肥満によるものがほとんどですが、小児ではこのような生まれつきの身体的特徴が原因になることもあります。

また、そのほかにも慢性的な鼻炎や鼻中隔彎曲症など鼻の病気によって空気の通り道が狭くなることも原因として挙げられます。

・中枢性睡眠時無呼吸

脳、神経の中で呼吸をつかさどる延髄の呼吸中枢の異常によって、正常な呼吸運動ができなくなり発症するタイプです。

はっきりとした発症の原因は分からないことも多いですが、心不全や腎不全を発症しているケース、脳梗塞や脳出血の後遺症、生まれつき脳に奇形があるケースなどで発症しやすいとされています。

睡眠時無呼吸症候群は、単に呼吸が止まるだけでなく、心臓、脳、血管に負担をかけ、高血圧、脳卒中、狭心症、心筋梗塞などのリスクが3~4倍に高まるといわれています。

また、睡眠時無呼吸症候群によって生じる日中の眠気は、判断力・集中力や作業効率の低下を招きかねません。経済的損失が3.5兆円になるとの試算もあるように、交通事故をはじめ医療事故・産業事故などにもつながれば社会的リスクも重大です。

症状

睡眠時無呼吸の代表的な症状には以下のようなものがあります。

・寝ているとき

いびきをかく
いびきが止まり、大きな呼吸とともに再びいびきをかき始める
呼吸が止まる、乱れる
何度も目が覚める

・起きた時

熟睡感がない、すっきり起きられない
体が重いと感じる

・起きているとき

強い眠気がある
だるい、倦怠感がある
集中力が続かない

症状の問診や診察から、睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、睡眠の状態を検査します。

専門施設で入院検査をする場合もありますが、自宅で行う簡易的な検査を行うことが多いです。具体的には、寝るときに手や体に体内の酸素濃度や胸の動きを計測する装置をつけて呼吸の状態を検査します。

治療

・生活習慣の改善、減量

睡眠時無呼吸症候群の患者さんには肥満の方が多く、食生活の見直しや運動を取り入れるなど、生活習慣の見直しが大切です。喉の周辺に脂肪が蓄積されていると呼吸がしづらくなるため、そのような方は体重管理や減量をお勧めします。

・経鼻的持続的陽圧呼吸法:CPAP(シーパップ)

AHI≧20で保険適応となります。
鼻にマスクをあて、そこから空気を送り出して、のどがふさがらないようにする治療です。
寝るときにマスクをあてバンドで固定するので、慣れるまで違和感はありますが、睡眠時無呼吸症候群の治療では最も有効とされています。慣れれば熟睡が得られるようになり、昼間の眠気の軽減にも効果があります。自宅に機会を設置し、月に1回通院をしていただき治療効果をみてまいります。

・マウスピース(口腔内装置)

睡眠中にのどがふさがらないように、口の中に装具を入れる治療方法です。装具は患者さん個人の口に合うように個別に作成します。

・外科的手術 扁桃腺が大きい場合、鼻づまりが強い場合などはそれが原因で睡眠時無呼吸が悪化している場合があります。具体的には扁桃腺摘出術、鼻中隔矯正術などを行います。診察上、手術による効果が高いと考えられた場合はお勧めすることもあります。